2016年6月27日月曜日

日系コンビニ苦戦 インドネシアで「3つの壁」


インドネシアで日系コンビニエンスストアが苦戦している。2009年以降、大手が相次ぎ参入したが、ローソンは店舗数がピーク時からほぼ半減。セブンイレブンやファミリーマートも店舗を増やせずにいる。一方、現地の大手2社は店舗数がともに1万店を超え、勢いの差は歴然だ。日系の普及を阻む理由を探ると、「3つの壁」が浮かび上がってきた。

■地場勢が圧倒

インドネシアのコンビニ2強は、華人財閥サリム・グループの「インドマレット」と、流通大手スンブル・アルファリア・トリジャヤが運営する「アルファマート」。共に10年からの5年で店舗数を倍増させ、1万店を超えた。


地場チェーンの強みは地域の商圏を知り尽くした店づくりと品ぞろえだ。低所得者層が暮らす地域では粉ミルクやおむつなど日用雑貨が中心の小型店を展開。都市部では総菜やデザートなども充実させた大型店を展開する。

ジャカルタ中心部のオフィス街にあるインドマレット。広く明るい店内には「和食さと」の弁当が並ぶ。熱々のおでんやホットドッグが作られているレジのそばでは色とりどりの「ミスタードーナツ」が食欲をそそる。

「どっちも便利。その日の気分で選ぶの」。ジャカルタ市内のアルファマートから出てきた飲食店員のノビさん(26)は言う。近くにあるファミリーマートには「行ったことはない」という。

1万店の店舗網は、取引先にとっても魅力だ。和食さとのサトレストランシステムズやミスタードーナツのダスキンも、インドネシア進出の提携先として日系ではなく、インドマレットを選んだ。後発の日系コンビニはこうした強敵と戦っている。

■外資規制の壁

日系コンビニは制度面でも手足を縛られている。外資規制だ。インドネシアでは外資は店舗面積400平方メートル以下の小売業に原則出資できない。零細事業者を保護するためだ。日系コンビニは直営で店舗展開ができず、現地企業とライセンス契約を結び、現地企業が多店舗展開している。

経営するのは現地企業なので、日本の本部が思うような機動的な出店は難しい。例えば、ローソンを運営するミディ・ウタマ・インドネシアはミニスーパー「アルファミディ」の出店を加速させている。15年は13年比で7割増の1023店に拡大した。その分、ローソンに割り当てる経営資源が減っている感は否めない。

コンプライアンス意識の高さが、出店で国内大手と水をあけられている一因との指摘もある。零細企業の育成を掲げるジョコ大統領はジャカルタ州知事時代、地元大手も含めて出店認可を凍結したことがある。出店には認可が必要だが、「コンビニ大手では未認可出店も散見される」(貿易省商業施設担当)。日系は「法令順守の観点から過剰な出店競争からは距離を置いている」(日系大手幹部)。

■日本流通じず

できたての総菜が充実しているのが日本のコンビニの特徴。インドネシアでもおでんや焼き鳥を売りにしようと、日系コンビニは店内調理の設備を備える。そこに現地の屋台文化を取り入れ、店内で食べてもらおうと、広い飲食スペースも設けたが、そこに計算違いがあった。「客は100円に満たない飲料を買い、長く居座るばかり。『中食』の持ち帰りも想定を下回った」(日系コンビニ関係者)


最近でこそ現地2強も都心の大型店で日系コンビニのスタイルを導入し始めているが、大半の店はもっと簡素だ。店内調理と飲食スペースを備えた日系コンビニは出店コストがかさむ割に、収益が上がらない。これが、現地のパートナー企業が投資をためらう一因になっている。

ミニストップは採算の改善が進まず、運営元だったスプラ・ボガ・レスタリは15年末、ミニストップ事業会社で保有する全株式を手放した。

苦境に立つ日系コンビニ。反攻の動きもある。ファミマを運営する日用品製造・卸大手ウイングス・グループは、地場中堅「スターマート」を買収。約80店のうち年内にも50店をファミマに改める。他社も含め日系は当面、商業ビルなどでの小型店の出店にも注力しつつ打開策を探る。



情報元:日本経済新聞

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